日本の文化の重要性

私の心の中にはいつも日本があります。日本という国と文化が私の中で大きな存在になってから、もう10年が経とうとしています。

全ては高校時代に日本で交換留学を経験したことに始まります。そもそも留学先を日本のみに絞っていたわけではありませんが、海外に留学すると決意したときの第一希望の行き先は日本であり、それが実現したことは大変有意義なことです。

日本の伝統的な絵画、浮世絵、そして日本の現代アートはいつも私の憧れです。日本での日常生活や文化における習慣および風習の違いは私を魅了し続けています。日本の人々の他者を思いやる心、特にお年寄りや目上の人に対する接し方は、私自身も是非とも見習いたいものです。

2008年、群馬県前橋市での留学中、日本の文化や習慣そして日本語に触れました。そこで会った人々の生活への向き合い方は、私の故郷フィンランドの人々のそれとも相通じるものがあり、日本は第二の故郷とも呼べる存在となりました。この経験と日本文化や芸術についてより深く学びたい気持ちから、何度も日本を再訪し、2013年には母校であるラハティ応用化学大学美術学部から協定校である富山大学芸術文化学部への交換留学も果たしました。

富山大学芸術文化学部のキャンパスは閑静なロケーションに位置しています。創作活動に理想的な場所で、素晴らしい教授陣にも巡り会うことができました。特に担当教授であった安達教授と髙島教授には大変お世話になりました。髙島教授の日本画の授業は私の日本の伝統的な絵画や岩絵の具、和紙、金銀箔等への関心を決定的なものにしました。

日本画と油絵具やアクリル絵具に代表される西洋画の違いはその画法のみならず、その構成が全く異なります。日本画では、主に和紙を用いて表面が作られた段階でほぼその構図が決定されます。日本画とはそれほどに繊細なものなのです。この点は制作の過程で様相が変化していく西洋画と大きく異なります。また日本画の制作には大変な根気と注意力、きめ細かな準備が不可欠であり、このことは日本画以外に向き合う際にも大変役に立っています。

フィンランドでは日本画の技術はほとんど知られておらず、再現することにも試行錯誤を重ねる必要があります。私は膠を塗った和紙に岩絵の具で描くこともあれば、キャンバス上に岩絵の具を用いることもあります。「I overrule(却下する)」というシリーズでは岩絵の具をアクリル絵の具とオイルパステルと共に用い、染めた和紙を形に切り取って、透けて見えるように重ねて張り合わせるという技法も用いました。

このように独学やメールによる指導によってある程度の日本画の技法を身につけてはいますが、伝統的な日本画技法を身に着けた画家の先生に再び日本にて直接指導を受けることが、私の夢です。